――先生が美容外科になろうと決めたのはいつ頃からでしょうか?
「高2の冬に医者になろうと決意して、大学では形成外科に所属していました。形成外科は5部門に別れていてね、たとえば先天奇形とか火傷とか手の外科とか。
その中の分野に美容があったんだけど、正直言って美容だけは僕には合わないとずっと思っていて逃げ回っていたんですよ。25年前の当時は今と感覚が違って、美容外科は特殊な人が受けるものっていう印象があって、なんていうか、街の不良みたいな感じでした。『あいつとは付き合っちゃいけないよ』っていう。ところが、僕が外科のチーフから講師に昇格するときに、担当教授から美容にいかないかと誘われて。最初は断ったんですよ。美容に興味はないし、やったことがないから、勘弁してくださいって。そうしたら『そう言わずに日本中の美容外科を見ておいで』と言われて。それで国内を視察に行ったら、もっとやめたくなったんです」
――あはは。なにがそんなにイヤだったんですか?
「当時の美容外科は、繁華街の雑居ビルの中にあって、下がパチンコ屋で上は消費者金融。待合室は暗くて……というような環境だったんですよ。それで教授にやっぱりこの話はなかったことにさせてくださいとお願いしたら、今度は海外を見て来いと言われて。それでニューヨーク、シカゴ、ボルチモア、イラン、中近東……。色んなところを見て回りましたね。ある日、ボルチモアでのことなんですが、
70歳ぐらいのおじいさんとおばあさんが手を繋いでクリニックにやって来たんです。『今日はワイフの誕生日だから、プレゼントにシワを取ってほしい』って。日本では特殊な人が受けるものだったのに、海外では一般的に美容外科が受け入れられている。そこから自分の中のイメージがだんだん変わってきて、日本で美容という医療を広めることによって多くの人に喜びを与えることができるかもしれないという思いで美容をやってみようと、教授と一緒に大学の中に美容外科を立ち上げることにしたんです」
――当時、お姉さまには猛反対されたそうですね。
「まだ一般的には広がっていなかったもんだから、『あんた何でそんなことやるの!』って。だけど17年経ったら、うちの待合室にちゃっかり座っててね、『シワ取って』って」
――1995年には自由が丘クリニック開業をされていますが、なぜこの街を選んだのでしょうか。
「視察時の反省もあって、開業するなら地域密着で質の高い美容医療をやってみたかったんです。
町に根ざした、地域密着型の医療。
繁華街ではなく、地元の人たちに受け入れてもらえるような場所。ハイクラス過ぎず、流行に敏感な街を探したときに、自由が丘の街がぴったりでした」
――地域密着型クリニックとして、先生が目指す美容医療の姿とは?
「何か新しいものを始めるのであれば、僕は普通2パターンだと思っていてね。これだけは負けないというものを追求していく、あるいは幅広いものを取り入れて、その一つひとつを一定以上にしていくということ。でも、僕がやりたかったのはこの二つのどちらかだけではなかったんです。地域に住む人の全ての美容の悩みに対応できるように、幅広い治療を取り入れた地域密着型の医療。治療の質をより高めるために、僕の尊敬する素晴らしい各専門分野の先生方にもお手伝いしてもらっています。」
――自由が丘での地域活動にも力を入れているそうですね。
「自由が丘は街全体でキッザニアのような活動をしていて、クリニックへ中学生の見学を受け入れているんです。中学生を美容医療の見学に寄こすなんて普通ないじゃないですか。でも毎年地元の中学生が来てくれて、白衣を着て、手術室で縫合の練習をしたりしていますよ。意外に美容医療の見学は結構人気があるみたいなんです。あと自由が丘の面白い点は、町全体としてコミュニティーを高めていこうという考えから、スポーツに力を入れているところです。みんなが少しずつ協賛してスポーツ選手を育てているんですが、これは大都会ではなくコンパクトな街、自由が丘だからできること。自由が丘にはスイーツ、雑貨、色んな顔があるけれど、次は美容と健康という顔が出来上がりつつあると実感しています」
――先生にとって、アンチエイジング医療とは?
身体の健康、外見の美しさ、精神の健康。僕は 内・外・心と言っているんですが、この3つが揃わないと本当の意味でのアンチエイジングは成り立たないと思っているんですよ。何のために若くきれいになるかと考えた時、単に長生きするのではなく、よい人生を送るためのものですよね。僕は『年相応』とか『いい年をして』という言葉は自分に対する諦めの言葉だと思ってるんです。『ハッピーエイジング』のような、年を取ることを賞賛するだけのような言葉遊びも信じてません。単に長生きするためのトレーニングは、Question だと思っていて・・・。
年を取るということは辛くて過酷なのが前提だけど、ただ苦行のように抗うのではなく、楽しみながら抗うことが大切だと思っています。そのためには低侵襲のようなローリスクの施術からきちんとした手術まで、選択肢を広げて対応できるような体制作りを進めていきたいです。他人に、大切な顔や体を預けることは凄い勇気がいることだと思う。専門医もいろいろあって、専門医療をもっていることはひとつの安心にはなるけれど、技術や最新設備だけではないと思う、掛かり付け医のような存在、つまり深い信頼関係が大切だと思うんです。
自由が丘クリニックのHP内にある古山先生のコラムはその名も『今週あったこと、感じたこと』。先生がオススメする地元の隠れた名店情報や日々の出来事など、医療に限らず幅広い内容が人気。http://www.jiyugaokaclinic.com/f_column/cont.html